ここまで株と外貨のお話はしました。次は商品取引のお話をしたいと思います。
でも商品取引と言ってもぴんと来ない人が大半ですよね?きっとそうですよね?
商品取引の大半は「先物取引」と呼ばれています。
はい、イメージ悪いですね。まず良いイメージなんてないですね。借金こさえたとか先祖伝来の田畑を失ったとかそんな話ばっかり…
実は私、この業界で営業マンをやっていました。新卒で入社して、はい、半年で辞めました。
何故この業界が悪評高いかと言うと、システム的にそうなる宿命を前提として、次に営業マンのマネジメントの問題かな、と。
評価システム上、リスクを二の次にして可能な限り多くの建玉を建てさせようという営業方針で、顧客との長期的な付き合いって感覚は希薄な気がしましたね。
商品取引を簡単に説明すると、例えば一年後に採れる米1トンの値段を今決めて手付金を払って買う(or売る)契約です。それを商品取引員という証券会社のような会社を通して商品取引所で売買するわけです。
英語にしてまさにcommodity future trading、 future(未来)のcommodity(均質的な商品)をトレードするということ。
実物を受け取る目的ではなく売買益のみを狙う投資家、正確にはこの場合は投機家ですが、予め決められた期限内に決済をしなければなりません。決済をしないと代金を全額支払って商品を受け取る義務が発生します。
先物取引市場は投資家(投機家)が売買益を狙って参入することで、農家さんは予め来年の売上を、豆腐屋さんや問屋さんは予め来年の仕入値を決定することを可能にするマーケットです。言い換えると投機家にリスクが転移されることで市場価格の安定がもたらされるシステムです。
取引の対象は米、大豆、トウモロコシなどの農産物と、金、白金(プラチナ)、銀や原油、ガソリンなどの工業原料に大別され、将来的な需要と供給のバランスがどう変動するかという予測をもとに相場が動きます。
例えばアメリカで大豆が不作だとなれば価格は下がり、その後東南アジアの経済成長で食肉需要が急増というニュースが出れば、畜産の飼料である大豆の需要増を見込んで価格も上がるわけです。
例えば中東でISのようなテロ組織が勢力を拡大しているとします。原油やガソリンなどの石油製品は製造施設の破壊や閉鎖によって供給減が見込まれて価格は上昇します。戦争となれば周辺国で活動する企業にとって工場が破壊されたり債権回収が困難になる危険があるわけで、経済的不安定や損失が生ずる危険から株式相場の下落に備えて「有事の金」と言われる金の価格も上昇するというわけです。
ちなみに日本での管轄はそれぞれ農林水産省と経済産業省、原則として金融商品という位置付けではないので金融庁の管轄ではありません。本音は縦割り行政と省庁の利権…なんでもありません。
先程の「有事の金」ですが、東京商品取引所での取引単位は1000グラム、2018年2月現在の価格はグラム辺り4600円前後、証拠金は66000円です。つまり66000円で460万円の取引ができる計算。
ちなみに現物の金の延べ棒が欲しい場合、1000グラム単位であれば金地金商で買うより先物取引で買った方が断然お得、2月現在でグラム5100円前後、先物相場は400-500円安い計算です。
さてさて、昔は金本位制と言って、各国の中央銀行に保管してある金塊の量が通貨の価値の裏付けとなっていました。例えば日本銀行に金塊がちゃんとあるから日本銀行券の価値を信用できる、安心して取引できる、といった具合です。
金は国際的な共通の価値基準であって、一万円札のような紙幣は国が保有している金の価値(及び税収への信頼)に応じて価格変動する借用書のような役割であった、と言い換えることもできます。現実に外国や国民から信用も安心もされていない国ではインフレが頻繁、ことあるごとに物価が上昇しては国民生活を圧迫します。
当然ながら金の価格も上下しますが、むしろ価値基準は紙幣より金の方にあるので、正確には円とかドルといった通貨の価値が金に対して上下していると表現する方が正確だというわけですね。
なので富裕層は一定の割合で資産の一部を金で保有することが多いわけです。日本にいるとあまり実感はありませんが、戦争や経済危機で住んでいる国のお金の価値が大暴落しても多少安心なわけです。
ここで少し考えるとわかった人もいるかも知れませんね。必要な生活費以外の資産を過剰に日本円基準で考えるのはあまり賢い話ではありません。日本円の価値自体が常に変動するものであること、一万円札は信用以外の価値のない紙切れであることは最低限認識しておいた方がいいかも知れませんね。
それではいよいよ、次の章で仮想通貨の話に入ります。
ちなみに近年で売買差益を狙う場合、マーケット規模や取引時間を考えると商品CFDを利用する方が圧倒的に増えているようです。