こんなのラーメンじゃない!!

日本の中で最もラーメン消費量の多いと言われる山形県、その中でも筆者の地元である酒田市は特に多いらしい。らしい…と言うのは、自分で一次資料に辿り着けていない為。基本的に統計局の家計調査によるものだが、調査もしくは比較の対象を県庁所在地及びそれ以外の政令指定都市に限定しているので正確なことはわからない。しかし県内を代表して世帯当たりの麺類購入額で三位、外食における中華麺への支出額で一位が山形市であることは明記されている。

地域によってはあまりピンとこないかも知れないが、この辺りでは家庭でも出先でもラーメンは良く食べる。基本的にほぼ全て醤油ベースの昔ながらの「中華そば」、若者がデートでドライブに出掛けて食事はラーメンということはごく普通のことで、少々大人なカップルは。。。田舎は子作りも結婚も早いのでそんなことは知らない、そもそも少々大人になったところで所得はさほど上がるわけでもないし。

参考:なるほど統計学園:山形市統計情報データベース_山形県

 

さて、2020年のこの正月に、仙台より従弟が5歳の息子を連れて帰省した折の話を伝え聞いた。その五歳児、どうやら仙台は定禅寺通りにある「満月」の大ファンらしい。「満月」とは山形県酒田市に本店を構えるワンタン麺の名店、普段食事の為に並ぶようなことをしない田舎者でもここだけは時として並んでしまう。それこそ盆暮れ正月の帰省時期ともなれば行列必須という、「ラーメン王国」酒田を代表する店と言っても差し支えない。その「満月」の仙台店である。

そんな孫のために叔母(つまりは五歳児のおばあちゃん)は早速ラーメンを作って食べさせようとした。満月もいいけれど、どうせ行列だし天気も悪いし、何もわざわざと、そんなことを考えていたかどうかはいざ知らず、それ以前に家庭で作るのも日常の土地柄、そんな祖母によるラーメンを一口食べた五歳児が発した一言。。。

「こんなのラーメンじゃない!!」

。。。と相為ったのである。

団らんの場で空気が一気に冷え込んだとか、一丁前に生意気なガキだとか、年寄り世代は勝手なことを口々に言っているようだけれど、筆者は敢えて言いたい。

五歳児の意見は至極、正論でしかない。

勿論大人気ない発言とは言えそもそもが幼児であるし、大人なら口に出して言わないだけ、喉元で止めているだけの本音だ。そもそもで名店「満月」が大好きと言っている人間に素人がラーメンを作って出そうという神経が本来はおかしい。家庭でラーメンを作る場合、アルミパックの素をお湯で溶かすだけの場合が大半なわけで、味噌汁ほども自分で出汁を取るようなことはしないのが家庭のラーメンなのだ。一応地元の知人友人何人かに確認したところ、出汁を別で取る家庭は皆無であることを確認している。

ここでは敢えて一刀両断しておくが、ただお湯で溶いたインスタントスープに麺と野菜を茹でて放り込んだものを、「ラーメン=満月(名店)」と思い込んでいる人間に出しているということなのだ。

しかし残念なことに、ここまで言ってもなかなか理解はしてもらえないのが現実のようである。それではこれが「満月」ではなく「一蘭」や「一風堂」であったらどうか?もっと身近に、同じ県内の「龍上海」であったら?それこそ同じ庄内で同じ中華そばの「琴平荘」であったらどうであったかと考えると、自ずと答えは変わってくるのではないだろうか。

地元にあっては忘れがちだが、それらと同様に職人が日々こだわりを以て試行錯誤を繰り返して出来上がったのが名店「満月」の味であるということを果たして認識しているであろうか、ということに他ならない。誤解を恐れずに拡大解釈をしてしまえば、「数寄屋橋次郎」の寿司が大好物と聞いてイコール「寿司が好き」と認識してしまい、家庭のちらし寿司を出すようなものである。否、アルミパックのインスタントにお湯を注いだスープに茹でたものを放り込んだだけの「料理」の方がある意味においては落差が激しいとも言える。

。。。はい、いささか解釈を飛躍させすぎたことは承知している。現実的なレベルに話を戻そう。確かにラーメンは家庭料理でもある、少なくともこの地域ではそうだ。家庭料理でもあるし、手軽な外食のご馳走でもあるのが、この地域にとってのラーメンなのだ。しかしその手軽さゆえに、しかも厳然たる差の表れにくい醤油味のスタンダードな中華そばゆえに、名物でもある「酒田のラーメン」を軽んじてはいないだろうかということだ。

それこそ「何もない」田舎者マインドの裏返しではないか。実際に田舎者の「何もない」は「何も見えていない」だけでしかない。

もう一度確認するが、ラーメンは家庭料理でもある。家庭料理には家庭料理の良さがあり、家庭でしか食べられない、飲食店で提供されることのない料理も多々存在する。しかし大半の家庭においてラーメンだけは、インスタントをお湯で溶いただけのスープに麺と具を放り込む以上、家庭の味はプロの味に完全に劣後してしまう。「家庭には家庭の味の良さ」という理屈が得てして当てはまらないのがラーメンなのである。

 

※注意1:筆者は特別にラーメンが好きな人種ではなく、地元以外ではあまりラーメンを食べることはありません。その場合も基本は非トンコツ醤油味の中華そばが大半です。

※注意2;当の5歳児とは直接面識がなく、顔すら知りません。家庭でのラーメンが日常的な土地柄、叔母の行為を本文中の表現ほど否定する意思もありません。敢えて言うなれば、伝え聞いた年寄り連中の反応が皆同様だったことに対する違和感や危機感による発露です。更に当の家庭のラーメンがどんなものかも実際には知りません。

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